職場の見えないストレス図鑑

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損傷した脳は治るの?リハビリと脳の可塑 [脳リハの基礎 Vol.1]

久保田競・宮井一郎(編):脳から見たリハビリ治療-脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方(第3章 リハビリで脳が変わる). 講談社ブルーバックス.東京.P91-155. 2005年.

 

赤茄子です。

今はめっきり担当することが少なくなりましたが、回復期病棟でリハビリしていた頃は脳卒中患者にかかわることが多かったです。思えば、入職して1年目から脳卒中患者を担当し、わけがわからないまま筋トレさせて先輩に怒られていた気がします。

書籍や論文に目を通すのに抵抗があったそんな頃は、内容をを簡潔的にまとめてくれているブログの先輩方にとても救われていました。中でもあるブログの内容は脳卒中のリハビリを行う上で、"どう考えて進めるか?"を非常にわかりやすく紹介してくれており、今でも内容がしっくりきていると自負しています(どのブログだったかは忘れてしまいましたが)。

 

さて、今回からは脳リハの基礎シリーズとして、しっくりきていた内容の論文をONE SHEET PTJに沿ってまとめていきます。若手のリハスタッフの一助になれば幸いです。

 

一次運動野の障害と運動麻痺

脳卒中と聞いて、一番イメージしやすいのは片麻痺では無いでしょうか。さらに付け加えると片側の四肢の運動麻痺。この運動麻痺は一次運動野および外側皮質脊髄路の障害部位によって、上肢にでたり下肢のでたり指にでたりと異なります。この出現した運動麻痺に対して「回復はしないから残存している四肢の筋力を鍛えて代償させましょう」というのが一昔まえの脳リハだったそうな。

 

損傷部位の機能練習はと周囲の神経を変化させる

近年(といっても1990年代くらいから?)、脳の可塑性という考えが広まってきました。これは、"損傷した部位は回復しないが、機能練習を行うことで損傷組織の周囲が損傷部位の役割に置き換わる"という考えです。

 

人工的に左指領域を梗塞させたリスザルの研究

Nudo RJ, et al: Use-dependent alterations of movement representations in primary motor cortex of adult squirrel monkeys. J Neurosci. 16(2):785-807. 1996.

 

左指の運動麻痺を生じさせたリスザルを、放置群と指機能訓練群に分類しました。放置群のリスザルは左指が使えないため、使おうとしません。一方、指機能訓練群は左指を使わざるをえない環境にすることで、強制的に左指を使わせようとします。最初はうまく使うことができませんが、使うしか無いのでひたすら使います。さて結果どうなったでしょうか…

 

一次運動野のマッピングが変化する

放置群は指を使わないため、一次運動野の指領域に変化はありません。一方、指機能訓練群は左指が使えるように変化し、一次運動野では指領域・指-手首領域の範囲が拡大し、手首-前腕領域が減少しました。つまりは、残存していた手首-前腕領域の一部が指・指-手首領域に置き換わったことで運動機能が回復したことを示しています。

 

ちなみに、同じリスザルでネジを回す(前腕の回内・回外運動)課題をひたすら行わせると、今度は指領域が減少し、手首-前腕領域が拡大しました。つまり、可塑性の本質は、"使用した運動にかかわる運動野領域が拡大するように、脳のマッピングが変容すること"と言えるのでは無いでしょうか。

 

本日の結論

脳卒中によって障害を受けた機能がどこかを検査にて把握する。そしてその部位の運動を限局的に行う(行う機会を増やす)ことが大事。

 

ところで、発症してからどのタイミングでリハをすべきなのでしょうか?

赤茄子

 

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